法市農村舞台第二回公演…3
舞台改修に奔走

この二つの素晴らしい芸能集団を招くことで、第2回法市公演は動きだした。春は法市がたばこ葉栽培で忙しく、人形座も花こまが沖縄、米国フェニックス公演など、復活する会が全国公演などで多忙を極めたため、初夏を迎えてから、具体的な動きが始まった。
平成16年5月31日、花こま団員の久保田弘さんがわざわざ姫路から法市に事前視察に来てくれた。待ち合わせ場所の三好町教育委員会に迎えたのは、大谷一由・同会生涯学習課長と農村舞台の会副会長の川上光洋・東京理科大助手、農村舞台の会事務局長の林茂樹・徳島県建築士会会長、林さんと同じ建築士会の高田哲生さんに徳島人、一行は法市で保存会と合流し、舞台にコンパネを張ったり大夫座を増設する作業の段取りを付けた。コンパネは車人形で使うキャスター付きの座いすを動かすのに段差のない床をつくるためで、大夫座は語りと三味線、十七絃筝、十三絃筝、篠笛の四人が座る特大タイプがいる。電源も新設する必要があることがわかった。
6月21日、兵庫県の県民芸術劇場の一環で福良小学校を訪れた花こま一行に徳島人が押し掛け、公演の意思を再確認。汗だくになり、子供に「もちづきばやし」を教える姿に感動を新たにした。8月28日には、プレイベントとして花こまの事前視察が実現した。今回来たのは、藤尾千恵子代表と、「さんしょう太夫」に「次郎右衛門」役で登場する田中美紀子さん、舞台美術担当の松本敏彦さんの3人。藤尾さん田中さんはさんしょう太夫のさわりを保存会の人たちに見てもらい、松本さんは舞台の仕掛けなどを確認した。このとき4人座りの大夫座は現在の2人座りの増設ではなく新設する必要があることもわかった。

 9月11日は農村舞台の会メンバーの花岡憲司さんの好意で、花岡さんが所有する自宅裏、阿南市内原町櫛ヶ谷の山に竹を刈りに行った。舞台の経費を少しでも浮かすため、大夫座の屋根を自前調達の竹でつくる。メンバーは花岡さん、林さん、川村一道さん、佐藤憲治さんに大工さんの細束和弘さん。細束さんが竹を選び切る。さすがプロで仕事が早いが、背が高いので倒すのが大変だ。花岡さんが身軽(?)な体を駆使して竹にぶら下がり、何とか地表まで引きずり倒す。運ぶのも大変で、肩にかつげる長さに切るが、水を吸っているので結構重い。昼を花岡宅でごちそうになり、午後も精を出した。
その後、舞台の床施工があり、いよいよ本番前日に花こま一行がやってきた。花こまは代表の藤尾さん(語りと三味線)、人形遣いの久保田さん、田中さんに主役の「つしおお」(厨子王)を演じる中山伸一さんの四人だが、「さんしょう太夫」では口上の福田百合子さん、十七絃筝の久保田美幸さん、十三絃筝の橋本さゆみさん、篠笛の木下弘之さんの4人に、事前視察に来てくれた松本さんをはじめ舞台の大道具小道具、照明・音響を扱う6人が加わる。
 そして何と言っても、今回の公演は発端をつくってくれた森崎芳樹さんが加わる。前日からお母さんの森崎善子さんと一緒に来てくれた。芳樹さんが善子さんの長男、善子さんは保存会会長の大久保さんの二女になる。親子三代そろった、心温まる公演にしたい。この思いが参加者全員に広がった。

三番叟の黄色い足袋で実りを祈願


公演は平成16年10月3日(日)午後一時から始まった。大久保進・法市農村舞台保存会会長と西尾大生・三好町長があいさつ。三好町教育委員会生涯学習課の大谷一由さんは今回の公演実現に本当に奔走してくれた。厳しい予算の中から、花こまの公演費と舞台の改造費などを出してくれた。感謝の一言につきる。保存会も舞台を広く使うために舞台裏に御輿を置く小屋をつくってくれた。また、当日は昨年の復活公演と同じく煮しめを用意してくれた。
最初に人形を舞わしたのは、阿波木偶箱廻しを復活する会。辻本さんの話のうまさ、楽しさはいつも通りだが、南さんたちが三好町の師匠から箱廻しを学んだことをきちんと説明し、県西部の人形文化にも触れてくれた。これで何のために今回の公演があるのか、意義が一層明確になった。箱廻しの三番叟は黄色い足袋を履く。愛媛県肱川町で旧正月の農休日に「春神楽」として迎えられる神事「ノバセ藁」で、黄色の足袋は秋の実り―たわわに実った穂の色を象徴―を予祝する象徴だ。箱廻しは三番叟の足で稲苗を束ねる藁を踏み、今回も御幣を切り奉る神事でその通り演じてくれた。
 観客は約300人。会場から人があふれてしまうことを恐れ、あまり宣伝しなかったにもかかわらず、昨年の復活公演とほぼ同数入った。法市公演が地域の伝統芸能として根づいている様が見てとれた。一番前の席では復活公演で見事なアフリカ音楽を披露してくれたgonsaki(ごんさき=宏さんの祖母の家の屋号、現在、宏さん浩子さん夫妻が住む)の井浦宏さん浩子さんが地元の子供たちと一緒に手をたたき声を上げ、舞台を盛り上げてくれる。
 箱廻しに続いては、森崎芳樹さんが登場。22歳から始め、今年、琉球民謡協会第22回民謡コンクール新人奨励賞を受賞した三線の腕前を披露する。舞台には大久保さんも上がってもらい、祖父と孫がみんなに顔見せした。今回の公演のへそになる演出だ。
森崎さんは沖縄の歌である「砂辺の浜」「唐船(とうしん)どーい〜豊年音頭」を情緒たっぷりに歌いあげてくれた。砂辺の浜は昔、沖縄の農村の若い男女が毎夜のように野や浜に行き歌い踊り恋愛した「毛遊」(もうあしび)を唄い、唐船どーいは沖縄の踊り「カチャーシー」が終わりになるころの唄で、男は男らしく勇壮に、女は女らしく流れるように、楽しく自由に踊る。みんな、森崎さんの三線と歌に聞きほれた。
 花こまは三番目に登場。八丈島太鼓と寿獅子、南京玉すだれ、車人形の説明から、車人形浄瑠璃芝居「新曲 さんしょう太夫―鳥おい歌の段」と順を追って盛り上がっていった。獅子は相変わらず見事な演技。まるで生きているかのごとくの演出は歓声を呼んだ。威勢のよいかけ声の南京玉すだれも素晴らしい。それにしても田中さんは普段あんなにおとなしいのに舞台に上がったときの元気の良さはどうだ。さすがプロだ。獅子は客席に下り、健康と幸せを願って頭を噛みに回った。こわがって泣く子もいるが、みんなうれしそうだ。玉すだれでは元気の良い浩子さんが飛び入りで参加し、素人とは思えない見事な芸(?)を披露した。
 車人形の説明は中山伸一さん。三人遣いは主遣いが木偶や人形の首(かしら)と右手、左が左手、足が両足。一人遣いは人形の首(かしら)と右手のみ、たいていの場合、左手や足は死んでいる。ところが車人形は同じ一人遣いでも、使い手の頭が人形の首、右手は右手、左手は左手、右足は右足、左足は左足に連結し、使い手の人間として動きをそのまま人形で表現する。使い手はキャスター付きのいすに座り、人形の足がしっかり地につく。木偶や人形の足が地面や畳についているかのように見せるために手すりを必要とし、下手な演技では宙に浮いているかのように見えてしまう三人遣いの人形芝居ではだいぶ異なる。それだけ動きはダイナミックで、「つしおお」(厨子王、遣い手は中山さん)が必殺技「岩石落とし」で母をさらった人買いの「山岡」(遣い手は久保田さん)を投げ飛ばす格闘シーンでは、遣い手と人形の胴体同士で連結した金具をはずし、宙を飛ばす。そのほか観客には三人遣いにはない、人形の首と遣い手の頭をひもで結んでいる点などがうけた。


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阿波農村舞台の会